【2021年】教えて!学長!
~直撃インタビュー~

今回は2人の岩手大学生が小川智学長にお話を伺いました。

3人で
(左)岩手大学生協学生委員会
杉本大輔さん(理工学部4年)
(中央)岩手大学学長
小川 智先生(令和2年4月就任)
(右)岩手大学生協新入生サポートセンター
岩渕菜摘さん(人文社会科学部3年)

(以下、敬称を略して表記します)

復興とグローバルを一つの線で結ぶ

岩渕:岩手大学では震災復興や環境問題など、様々な分野で取り組みがなされていますが、他の大学にはない岩手大学ならではの取り組みを教えてください。
学長:震災復興や防災は岩手大学の1つの大きな特徴だと思います。ただ今回は違うものをご紹介します。学生センターB棟の1階にグローバルビレッジという、留学生や日本の学生、先生、地域の人たちが集ってコミュニケーションをする場を設けています。岩手大学は県内で最も世界各地から様々なタレントを持つ人が集まる場なので、それを生かす空間を作りたいと思い設置しました。
また震災の記録誌を2019年に作り、現在その英語版を作成しています。私の思いは、グローバルな環境の中に「復興」という岩手大学の経験を、世界各地の自然災害の地域にいる人やそこから学びに来ている人、グローバルビレッジにいる人に対し提供したいということです。復興とグローバルがそこで1つの線で結ばれる。そこが我々が誇る、岩手大学の特徴だと思っています。

学生の皆さんはグローバルビレッジを知っていましたか?
岩渕:私は人文社会科学部で留学生の知り合いがいたこともあり、グローバルビレッジを訪れたことがあったので知っていました。気軽に留学生と交流が出来たり、今はオンラインで交流会も行われていますよね。
学長:そうなんですよ。
岩渕:今なかなか感じる事の出来ない海外の雰囲気を感じることができる、とても素敵な空間だと思います。交流しなくとも休憩スペースとして利用できるので、たまに利用しています。
杉本:私はB棟にそんなスペースがあるな、という存在は知っていたのですが、岩渕さんのように何をしているかまでは知りませんでした。最近研究室で英語の論文を読むこともあり海外の方とのコミュニケーションに興味をもっているので、ぜひ今度訪れてみたいです。
学長:ぜひ、外国語のスキルを磨くことのできる場でもあるので訪れてみてください。

学生が日々の授業を受けられることを最優先

杉本:大学生活、コロナ禍によって変化がありました。特に大学での学び方についても変化があったと思うのですが、小川学長はどのように考えられているのでしょうか。
学長:お二人が3年生と4年生なので、コロナ禍前の大学を知っていらっしゃるからお話するのには良いかなと思います。私は学長になった年に緊急事態宣言が出たので、コロナと共に今を迎えているわけです。私自身が当時最優先に考えたのは学生が滞りなく授業を受けられる環境を作ることでした。そのために1つは入学式で多くの人を集めることを断念し、メッセージをビデオ配信しました。また、食堂のテーブルにパーテーションをセットし、学生が安心して食事をとれることを考えました。ところがですね、実際には緊急事態宣言が全国に発表され、学生にはリモートで授業を受けてもらうことになりました。ただ全てが悪いわけではなく、これからの時代に必要なスキルを教員も学生も身につけることが出来たと思っていますので、悪いことばかりではなかったと感じています。学生が日々の授業を受けられることを最優先としたのが、今回の対応の最初のステップだと思っています。
杉本:ありがとうございます。 今までは板書をノートに書き写していたが、オンライン授業が始まってから、だんだん提出物や課題もパソコンで出すようになったので、直接パソコンでメモををとるようになりました。また、オンライン授業が続いていた時期は友達に会えないのがすごく大きくて、分からなかった所をお互いに質問しあうことが出来ていたのですが、それが出来ないのがすごく大きかったなとオンライン授業の間感じていました。今対面の授業出来、改善されてよかったなと思っています。
学長:オンライン授業と言っても、資料配布型とオンデマンド配信型とリアルタイム配信型の3パターンがあります。学生同士のディスカッションをさせるためにはリアルタイム配信をやらないとダメなので、スタートの段階で昨年の4月以降いきなりそれをやれというのもなかなか難しいところがありました。ただ、だんだんと工夫をしていただけるような先生も増えてきたので、いろんな形式での授業の提供が出来ると思います。
岩渕:ありがとうございます。
では続いて、今オンライン授業は多くの大学で行われていると思いますが、岩手大学では対面授業を再開していらっしゃいますよね。それに学長の強い思いというのを感じているのですが、対面授業を実施する想いについて教えていただければと思います。
学長:オンライン授業にはオンライン授業の良さがあり、対面授業には対面授業の良さがある。だからどちらが良いということではなく、相互に補完しながら教育体系を作るのが必要かなと感じています。ただですね、映像の中でお互い意見交換するだけではなく、本当の教育というのはリアルに人と人が関わることが重要ではないかと思っています。座学のように一方的に講義をする場合は良いですが、ゼミや実習、実験などはやりにくいもので、対面でやるべきではないかと思っています。ただ、ゼミや実習等にかぎらず、対面授業の重要性は当初から考えていて、期末試験や夏の集中講義は対面で行うことを決断し、それ以降現在に至るまで対面中心になっています。ですが、必ずしも対面でなければならないことは一つも無く、必要に応じてICTを利用したようなリモートも合わせて先生方に自由に選択してもらっています。
対面授業に関して、リモートも経験して、今は対面に戻った学生さんはどう思っていますか。
岩渕:最初、オンライン授業になった時はやった!と思って、家から出なくて良いので楽だなと思ってたんですけど、実際やってみるとコミュニケーションの取りづらさとかも感じていましたし、オンラインになったからといってやることが減ったわけではなくて…
学長:それはよく聞きますね

一同笑う

岩渕:やっぱりレポートや課題がその分資料で出すことが多くなったので、負担的にはオンラインの方があるなと感じていました。また、直接コミュニケーションを取れないので、友達と日々会っていることが授業以外でも大事なんだなと感じたのはありますね。なので、対面が始まって、先生や友達と会ってやるというのが勉強のモチベーションにもつながるなと思っているので対面の良さを最近感じています。
学長:ケースによってはね。オンデマンド型で配信して、いつの時間でも対応できると学生の時間の自由度を広げるという意味では、必ずしもすべてが対面の必要がないケースも考えられるのかなとは最近思っています。

パソコンは大学生活だけでなく社会に出てからも重要

杉本:2021年度の入学生から「ノートパソコン必携化」を始められたとお伺いしました。そちらについて、導入された経緯や思いがあったのかをお伺いしたいです。
学長:これからの時代は、対面で行う授業のツールとしてオンラインとのハイブリッド化、つまり必要に応じて在宅で授業を受けたり、講義室で授業を受けていながらデスクの上にはパソコンがあって、そこで黒板情報とはまた別に授業のコンテンツが提示されたりしてもいいわけですね。大学の授業もそういったことを今後模索していこうと考えておりますので、まずパソコンを利用できる環境を学生さんたちの中に持っていただきたい、ということで必携という形にしました。実はそこで学ぶスキルというのは社会に出てからも重要で、社会に出て自分のデスクにパソコンがない人はほとんどいない、つまりそれを使いこなす必要があるわけです。学生諸君が在学中、そして卒業後もスキルとして身につけられるように、今回大きく舵を切ったというふうに考えていただいていいかなと思いますね。
杉本:ありがとうございます。大学生活でただ使うというだけではなく、社会に出てからのことも見据えられての導入ということで、なるほどなと納得できました。

高校では一生の友を作り、習うべき科目を学んできてほしい

岩渕:高校生のうちにやっておいた方がいいことというのは何でしょうか。
アドバイスをお願いします。
学長:やっぱりね、(自分の子供たちを)見ていて思うのは高校生のうちにどれだけ友達がいっぱいいるかだね。ということで、思いとしてはね、ぜひとも将来親友となるような友人を作ってもらいたいなというふうに思います。進学校の場合、勉強中心になっているような傾向を岩手県の場合は感じますけれども、それよりも大事なのは一生の友をその中で見つけることじゃないのかなと思います。
ただ、やっぱり大学に来るので、しっかりと基礎学力はつけて来てもらいたいなと思いますので…学長ですからね。

一同笑う

学長:ちゃんと勉強をすべきところは、大学に入って来て困らないぐらいにしっかりと学んできてほしいなと。受験科目じゃないんですよ。

一同うなずく

学長:受験科目じゃなくて、高校の時に習うべき科目。受験とは関係なくても、必要な科目だからこそそこで学んでいるわけですから、ちゃんと学んできてほしいなというそういう基礎学力は欲しいというふうに思います。
岩渕:なるほど、ありがとうございます。私も高校の時に勉強を一緒に頑張ってきた友達は今でも関係が続いていて、これからも一生仲良くしていくんだろうなと思うので、それはぜひ高校生にも、楽しく過ごしながら、勉強を頑張っていただきたいと思います。

受動的→能動的。学習が学問に変わる

岩渕:では続いてです。大学に入ると高校までとは違って、生活環境や学習など様々な変化があると思うんですけれども、高校と大学の違いというのを教えていただければと思います。
学長:高校の時には学習指導要領というものがあって、高校生にはここまで教えなさいというのが国で決められています。しかし、大学では先生方が研究をしている分野に関して、それを教育に落とし込んで学生を育成します。
だから、高校までと大学で大きく違うのは、要するに、能動的であり、主体的である学習に変わっていくということです。学習というか…例えば、高校までの初等中等教育までは学習と言って、学び習うとよく言うじゃないですか。でも大学というのは学問をするところなので、学び問うだから、要するに自ら主体的に、教える側に対して、すなわち教員に対してアプローチをして、そこで学問を作り上げていくというような形になりますから、受動的であった高校生の時と違って、能動的に変わるというのがドラスティックに違う内容だと思いますね。

さらに、驚くなかれというのは、要するに指導要領がないんですよ、大学には。だからこういうことを教えなさいというのは実はない。

一同うなずく

学長:どういうふうにしたら皆さんが社会に出て活躍できるかなというメニューをカリキュラムの中で用意しているということで、常にカリキュラムは変わっていきますよね。なんで毎年変わるんだろうと思うかもしれませんけれども、より良くなるために、不要なところは削って、新しいものを付け加えていくという、そういう日々の繰り返しなんです。
岩渕:ありがとうございます。そうですね、私たちも結構大学で過ごしていると、自分で情報を集めないと活動とかも置いて行かれているような気になるので、やっぱり受動的ではなくて能動的っていうのも大事だなというふうに思います。

大学に入るのはあくまでもスタートライン。その後の4年間をしっかり考えて。

岩渕:では最後に、これから入ってくる受験生新入生にどういう気持ちで岩手大学に入ってきてほしいか、ということについてお願いします。
学長:大学に入ると、いろんな地域から人が入って来ます。いろんなタレントたちがいるということになりますので、高校までとは全く違う環境がそこに待っています。それで入る前にですね、じゃあそういう状況になったときに、自分のキャンパスライフは一体どういう形で展開するのかと。「入った!良かった!」で終わるわけではなくて、大学に入るのはあくまでもスタートラインなので、そこでゴールではないわけだから、大学におけるキャンパスライフというものを自分の中でイメージしてそれをセットするということは大事かなと思っています。

それで、さらに大事なのはですね、大学における時間というのはまた限られているし、人生の中で最もゆとりのある時間がそこにあるということは間違いないということは教えてあげたい。
そうでしょ?

一同うなずき笑う

学長:だけれども大切なことは、その自由な時間というのは無限に続くわけではなくて、社会の構成員として、卒業後は活躍するわけですから、自分がどういうスキルをもって社会に貢献するかというのを大学時代に決められる、あるいは大学に入る前にすでにそういうものを持っているのであれば、それを実現するために4年間をどう設計するのかというのも含めて考えてほしいなと思います。
学生:ありがとうございます。
杉本:ここまで本当に岩手大学に対してだったり、あとは教育に対しての熱意というか情熱みたいなものを今日はたくさん聞くことができて、本当によかったです。ありがとうございました。
学長:岩手大学はね、素敵な大学ですから。ぜひ皆さんも一緒にもっと良い大学を作りましょう!
一同:ありがとうございました。(拍手)
【協力】
 岩手大学学長 小川智
【取材・制作】
 岩手大学生活協同組合
 新入生サポートセンター広報部


お問い合わせ

岩手大学生協 0120-823-533

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