教えて!学長!
~直撃インタビュー~
今回は2人の岩手大学生が小川智学長にお話を伺いました。

(左)岩手大学生協学生委員会佐藤佳樹さん(理工学部4年)
(中央)岩手大学学長小川智先生(令和2年4月就任)
(右)岩手大学生協新入生サポートセンター 畠山愛深さん(人文社会学部 3年)
(以下、敬称を略して表記します)
イーハトーブ協創ラボ・中央食堂整備プロジェクト
畠山:創立80周年の2029年に向けてプロジェクトが始まりましたね。その中で学生みんなに関わるイーハトーブ協創ラボ・中央食堂整備プロジェクトを一つ目にあげている理由を教えてください。
学長:まず、今年は創立75周年ということで5年かけてしっかりとした計画のもとに取り組みを進めようと考えています。80周年に向けて8つのプロジェクトを立ち上げていて、そのうちの最初が中央食堂のプロジェクトになっています。
中央食堂は1972年にスタートしてもう50年以上経過しているというところで、手頃な価格で栄養バランスのとれた食事を提供するという学生食堂としての役割を果たしてきましたが、やはり施設の老朽化もあるので、学生の食生活を支える場として新しくしようという計画を立てています。リニューアルして設備も綺麗になって学生さんたちに快適に朝食、昼食、夕食の時間を過ごしてもらえるようにしていきたいなと思ってます。
中央食堂は1972年にスタートしてもう50年以上経過しているというところで、手頃な価格で栄養バランスのとれた食事を提供するという学生食堂としての役割を果たしてきましたが、やはり施設の老朽化もあるので、学生の食生活を支える場として新しくしようという計画を立てています。リニューアルして設備も綺麗になって学生さんたちに快適に朝食、昼食、夕食の時間を過ごしてもらえるようにしていきたいなと思ってます。
学生頷く
学長:そして、折角学生たちが集まってくるので2階のスペースをうまく利用し、イーハトーブ協創ラボという、学内の学生だけじゃなくて教員、職員、それから学外の人たちもそこに出入りできるようなイノベーションコモンズの役割を担う場所を提供し、学生たちに早い段階から社会の人たちとも関わる機会を提供できればと考え、一番に挙げたということです。
畠山:ありがとうございます。
いろんなところとの関わりを持てる機会があり、凄く良いなと思って聞いていました。今年はコロナが明けてきて中央食堂のパーテーションも段々撤去されてきていますが、それに応じて食堂にさらに活気が戻ってきてるように感じています。エアコンが設置され、食堂がさらに学生の交流の場になっているように感じますが、学長先生が考える食堂の重要性は何ですか?
いろんなところとの関わりを持てる機会があり、凄く良いなと思って聞いていました。今年はコロナが明けてきて中央食堂のパーテーションも段々撤去されてきていますが、それに応じて食堂にさらに活気が戻ってきてるように感じています。エアコンが設置され、食堂がさらに学生の交流の場になっているように感じますが、学長先生が考える食堂の重要性は何ですか?
学長:食堂というのはクラブとかあるいはサークルで朝練をやったあとに授業が始まる前にみんなでわいわい話をしながら食べたり、授業の合間やお昼休みに友人たちといろんな話をしたりする非常に大事な場だと思っています。
学生頷く
学長:パーテーションについては折角の場なので是非みんなに交流してもらいたいということで取ることにしました。ただ、全部取るのではなく、必要に応じて取っていって、どこまで取れるのかというところは使うみなさんに決めてもらえればいいと思っています。
畠山:
私は食堂をよく使います。パーテーションがなくなったので友人と集まり大人数で食べやすくなりました。たまに最近会わなくなった他のコースの友人と食堂でばったり会って、そこから「最近どうなの?」みたいに近況報告することもあり、食堂が交流の場としてもっと広がったら良いと感じてました。先ほども使う側が決めてほしいという話がありましたが、二人で食べるときにパーテーションがあるところで横に並ぶと食べやすいと思うので、そこを見極めながら使っていけると良いと思います。

学部改組・新設による学生の学びの変化とは?
佐藤:二つ目の質問です。2025年から学部の改組や新設があり、学内でもとても話題になっていると思います。例えば私が所属している理工学部では、3つある学科が理工学科というものに統合されて、コースも新しく変わるのかなという風に存じております。このように学部の改組が行われることで、今後の学生の学びがどのようになっていくとお考えでしょうか?
学長:まず大学が提供しなければいけないのは社会が要請する人材を大学の教育の中で育てて社会に出していくという事だと思います。今の時代はAIが急速に進化している状況にあり、より現代に合った教育を提供することが大事だと考えています。学長になって理系分野を先行的に大型改組する事を約束したので、理工学部、農学部の改組と、獣医学部の新設という形でまずはスタートしました。様々な専門分野がありますが、それにプラスして、数理・データサイエンスの能力をすべての分野の理工学部の学生たちに身につけてもらうために今回の改組をしました。自分たちの専門的な能力はそのまま育てて、さらにデータサイエンス能力を付加するという形になります。そしてそのための仕組みとして、3学科8コースを1学科8コースに変えて、まずは入学してから自分の基礎的な能力を高め、そのあとに専門を決めるという専攻の決め方、専門分野の決め方に自由度を持たせるために1学科にしました。それから、新たに情報分野を強化するということで、デジタルメディアやUX、UIデザイン分野を強化するためにクリエイティブ情報コースを新しく作って新たに募集しています。大学に入ってから少し余裕を持って自分たちが学びたい分野を考えられるような仕組み、学びたいものが学べる構造を作り上げています。
学生頷く
学長:やはり将来の岩手や日本を支える人材を作るということになると、どうしてもこれから迫りくるビッグデータ、データサイエンス、あるいは人工知能そういったキーワードに対応した人材の育成が急務です。無論新しく入ってくる学生たちだけでなく、在学している学生たちにも、そういった教育のメニューを順次付加的に提供していく形で計画しています。
佐藤:既にたくさんあった岩手大学の選択肢にさらに付加されて、より多くの選択肢が学生に提供されるということですね。専門的な知識は今まで通り、またはさらに評価されつつも、新しい学びを経て、変化する社会で対応できるような人材の育成に向けても、より岩手大学が強化されることがわかりました。私も一年生のときは様々な専門分野に興味があったのですが、二年生や三年生から自分の学びたいことを選べる選択肢が増えるのだということがわかりました。
主体的な学びと経験
畠山:私たちは、大学に入ってから3、4年過ごしていますが、4年間ってかなりあっという間だと思います。将来就活を見越したときに正課外の活動も必要だと感じていますが、なかなか1人では、新しいことに挑戦できないという学生もかなりいると思います。学長先生は正課外の活動になかなか踏み出せない学生に対してどのように思っていますか?
学長:まず正課外の科目というのは、それなりの意味合いというのをもっています。単位を目的とした科目ではないので本当に必要である学生たちがそこに向かっていくという科目であってほしいと思っています。
学生頷く
学長:正課外の取り組みは、主に二つあり一つ目は、国際教育センターです。留学を念頭に置いている人はそこを一つの窓口としてノックすることが重要ですし、センターでは豊富な海外留学の制度を用意していますので、是非利用してもらいたいと思っています。さらにキャンパス内にはグローバルビレッジがあり、留学生たちがそこに集まっているので異文化の交流ができます。そういうものも活用してもらえれば、正課外の科目も知見を深めるのに役立ててもらえると思います。
学長:もう一つは、地域協創教育センターで正課教育と正課外教育を結びつける仕組みを新たに作っていくことです。令和7年度から正式にスタートするので、それを是非見届けてもらいたいなと思います。アントレプレナー人材やソーシャルイノベーション人材を育てるために、岩手大学の先生だけではなくて、地域の企業や自治体の方、岩手大学以外の先生にも協力してもらう、そういう場を用意して学びを深めてもらいたいです。可能な限りそちらは正課科目の方に取り込んでいきたいと思っているので、ぜひ活用してもらいたいです。
学生頷く
学長:何が大事かというと自ら情報を取りにいかないと今の時代はどうにもならないので、そういう人たちが増えるといいなと思っています。
畠山:今のグローバルビレッジの話などを聞いて、地域の関わりや岩手大学の先生だけでなく、他の大学の先生との関わりは大事だと思いました。私は学校にある団体の中でネオという陸前高田市との関わりがある団体に所属しています。陸前高田の中にある課題や改善点を岩手大学生が解決するための活動や立教大学との提携を通して、自分から動いていくことが大事だと感じました。大学の中でもいろんな取り組みがあり情報収集を含めて自分から探さないと、なかなか今の時代難しいですよね。大学や生協にもこういう活動があって、挑戦の場はたくさんあるので、きっかけは学生が情報収集して探していけたらいいなと感じました。
学長:大学もいろいろな形で情報発信していますが、あまり面白くないから見に来てくれないのかなと思うので我々も工夫してやりますし、学生さんも積極的に見にきてほしいと思ってるんですよね。
畠山:大学で提供しているもののほかにもサークルから外に出てるところもあるし、自分たちによって動きようはたくさんありますよね。そこをどうつかむかというのが大事だと改めて感じました。
大学生に求められるプレゼンテーションスキル
佐藤:PowerPointでスライドを作成して発表するなどの経験を持つようになりましたが、大学生協で実施したアンケートによると、約7割の学生が発表でうまくいかなかったこと自信がなかったことという項目に対して「話し方や伝え方」を挙げています。その要因として発表スキルの練習機会が少ないのかもしれないと考えられますが、学長先生はどの様にお考えでしょうか。
学長:プレゼンテーションにかかわるソフトウェアとしてはPowerPointが入ってるケースが多いと思いますが、それをうまく使って喋るためのポイントは二つありますね。まず資料を上手に作るために、相手が見やすい画面を作り上げてもらうことが一つ、そしてちゃんと伝わる言葉を喋れているかというのがもう一つ。この両方ができないとプレゼンテーションスキルとしては完成しないと思っています。どういうのがよいプレゼンテーションなのかを自分から見に行く聞きに行く、上手な人にどうやったら上手にプレゼンテーションできるかを恥ずかしがらずに聞くというのが大事です。
いきなり社会に出て、人前でプレゼンしなさいと言われてもなかなか難しいかもしれません。一番大事にしなければならないのは、誰が聞いているのかということを分かってしっかりとした日本語を作るということなので、まずそこからスタートかなと思います。我々が相手にするのは不特定多数ではない会場の中の聴衆だったりするので、その聴衆に合わせてストーリーを練って喋り方を工夫するということになります。そういったことを含めて数理データサイエンス・AI教育というものを充実していくために、現在はリテラシーレベルから応用基礎レベルへの展開を始めています。プレゼンテーションスキルと合わせてデータサイエンス能力を付けていくことによって、相手に分かりやすい喋り方ができるかなと思っています。
いきなり社会に出て、人前でプレゼンしなさいと言われてもなかなか難しいかもしれません。一番大事にしなければならないのは、誰が聞いているのかということを分かってしっかりとした日本語を作るということなので、まずそこからスタートかなと思います。我々が相手にするのは不特定多数ではない会場の中の聴衆だったりするので、その聴衆に合わせてストーリーを練って喋り方を工夫するということになります。そういったことを含めて数理データサイエンス・AI教育というものを充実していくために、現在はリテラシーレベルから応用基礎レベルへの展開を始めています。プレゼンテーションスキルと合わせてデータサイエンス能力を付けていくことによって、相手に分かりやすい喋り方ができるかなと思っています。
佐藤:私も他の人の発表を聞いてインプットするというのも大事だなと思う半面、たくさん練習したりいろんな人に聞いてもらうアウトプットもとても大事だと思っています。私も最近研修室で発表をする機会があり、自分の発表に対して言われることの他にも、他の人の発表に対して教授から言われていることもなるほどと思ったり、自分の発表に早速組み入れようと思ったりする事もあるので、いろんなことを学びながら自分のスキルも成長していけるのかなと思っています。
畠山:私は人文社会科学部の中でも行動科学専修プログラムというところにいて、比較的プレゼンテーションとかは使えなきゃダメですよみたいなところなのですが、その中でも3年生前期の中間報告会の時に先生に、1年生の方がうまいよ、と言われてしまったんですね。改めて今の時代、プレゼンテーションとか使いこなせないと将来難しいなと思いました。自分で練習したり、お話にあった通りうまい人の発表を聞いたり参考にする機会を自分から作っていかないと大変だと改めて感じました。
学長:おっしゃるように、今中学校や高校でプレゼンテーションの実習みたいなのが組み込まれているので、上手な子は上手で入ってきますからね。ただ、大学での座学を終えた後、基礎的な知識がついてきて、それを踏まえて自分がやったことを相手に伝えるプレゼンテーションが生まれてくるので、別に焦る必要はなくて、でも何をすれば相手に伝わりやくすなるかは考える必要があると思います。
畠山:日本語をどう伝えるかが大事ですよね。
学長:ぜひ上手にしゃべれる人になってください。
一同笑う
畠山:ありがとうございます
プラスワンを自分でつかむ
畠山:最後になりますが、これから岩手大学に入学してくる受験生、新入生にどのような気持ちで入学してほしいでしょうか?
学長:大学受験を終えた新入生は、結構みんな疲れて大学に入ってくるように感じます。その面では大学をゴールだと思っている人がいますが、全然ゴールではありません。これから何かが始まるというスタートラインであるわけですから、そこを勘違いしないで大学一年生の生活を始めてほしいなといつも思っています。
学生頷く
学長:高校までのように学生指導要領があるわけではなくて、大学教育というのは大学教員の専門性に裏付けられた研究成果を教育として提供するというものです。高校までの学びとは全く違います。だから大学ごとにカリキュラムは全く異なるわけです。高校までは「学習」といって「学び習う」ですが、大学へ来たら「学問」をやるわけなので、「学び問う」に変わります。この「問う」ということが大事で、いろんなことに疑問を持ったら、それを解決しないまま終わらないで、解決するための道筋を自ら作っていくということが非常に大事だと思います。そういう意味で、「学び習う」から「学び問う」に切り替えてもらいたいと思っています。
学長:あと、大事なことはですね、「大学に何しに来たの?」ということです。「あなたは大学に入るときに、何を目指して入ってきましたか?」、「自らの何を磨いて、大学を出て行きますか?」。ただ単に4年間を過ごすということではなくて、一定の目標を持ってもらいたいと思っています。そこが一番大事ですね。
ただそうは言ってもですね、お二人はすでに経験していると思いますが、大学4年間は本当に自由ですから!
ただそうは言ってもですね、お二人はすでに経験していると思いますが、大学4年間は本当に自由ですから!
一同笑う
学長:これ、社会に出ると二度とありませんので。今日から後期の授業がスタートですが、こんなに休みが長いということはもうないですから。
一同再び笑う
学長:ということで、大学に入学したら、もちろん学ぶことも大事ですが、友人を作ったり、自由な時間を満喫したり、趣味を深めたり、色んなことに時間を費やしてもらいたいなと思っています。そして、岩手大学を出たときに、「さて、入ったときと出るときと自分は一体何が変わったか」というのを「問う」てほしいですね。
畠山:ありがとうございます。正課外のお話がありましたが、私は放送サークルの一環で様々な経験をしてきました。その経験を通して自分がこれからどういうことに挑戦していきたいのかを定めるきっかけの一つにこの大学の自由な時間を使っていけたら良いのかなと感じました。大学に入ったらゴールと思う新入生は多いと感じますが、そこでゴールではないと思います。また、スタートラインで目標を決めるだけでなく、実際に大学生活が始まってから、自分がもっとどういうことをしたいのかということを見つける場に、大学4年間を使っていけたら良いのかなと改めて思いました。
学長、感心しちょっと驚く
学長:自分の専門に「プラスワン」で何かを自分でつかむということだよね。決めるのは自分ですから。まあ何もしなくても、専門はちゃんと身に付けて卒業してほしいけどね。
一同笑う
畠山:ただ卒業するだけじゃなくて、自分で新たにプラスワンを見つけて、何か一つでも身につけて卒業できたら良いのかなと思います。
学長:それが自分の専門外のことでも良いし、もっと広く捉えて、サークルでの経験でも良いし、地域社会での体験でも良いし、何でも良いんだと思うんだよね。そういうものが一つ加わることで、「豊かな大学生活を送ったな」という思い出にもなるし、社会に出てからもそれが一つの経験として活かせることに繋がるかもしれないので、ぜひそういうものを目指してもらいたいなと思います。新入生から卒業生までそういうメンバーをこれからも多く育てていきたいと思っています。
畠山:ありがとうございます。
一同、礼

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